「ボブディラン自伝」を

 ベッドに寝そべってパラパラと読んでいる。書かれてる内容の時系列はバラバラで、一つ一つのエピソードがほとんど脈絡無いので拾い読みするにはちょうどいい。ちょっと興味を持った文章を見つけたら前後2ページずつを読むというやり方で、なんとなく全部読んでしまった。


 どこまでも客観的にボブディランを語ってる。むしろ自伝であるはずなのに「ボブ・ディラン」というカリスマとしての存在が希薄なのが不思議。


 別段面白い訳でもないけど気になったエピソードが一つ。ボブディラン命名に関して。内容としては1ページかそこらだったけど、言葉の響きやそこから連想するニュアンスなどを非常に気にかけているのが良く分かった。以下その変遷。


ロバート・ジンマーマン(本名)
ロバート・アレン(両親からの名前)
ロバート・アレン(アレンの綴りをAllenからAllyn)
そこでAllynからDylan Thomas(詩人。アル中で死んだ)への連想。
ロバート・アレン>ロバート・ディラン
ただロバートをボビー、ボブにしたら……
ボビー・アレン>ボビー・ディラン(ボビーは軽薄すぎる)
ボブ・アレン<ボブ・ディランボブ・ディランのほうがミステリアスな響きがある)


 メジャーデビュー前のブルース・スプリングスティーンがボブディランを尋ね、成功するでしょうか?と指南を仰いだとき、「名前が長いな」と答えたという自伝には書かれてない逸話を思い出し、世が世なら細木和子もビックリではないかと思った次第。


 気になったのは、様々な固有名詞、人名が出てくるのに原注、訳注はいっさいない点。ただおそらく意図的にそうしたようにも思える。分からなければ自分で調べればいいだろうし、現在のようにネットがあれば問題ないわけで。


 翻訳本で350ページを超えるハードカバーにも拘らず1800円という価格は良心的。紙質と写真を削ってでもこの値段を達成したのはえらい。