太千にて

ジョブズのエピソード


 サービスにも厳しかった。従業員がお茶をつぎ足した直後、「ねえ、サービスって何だと思う?」と突然聞いてきた。
「客が店に行くのは、おいしいか、サービスがいいかどちらかだ。ここはおいしいから来ている」。すぐに高橋さんは、温かいお茶と差し替えるべきだったと気づいた


以下独白


 これを想起させる経験を昨日、太千という寿司屋でした。


 そこは住宅街の中にある寿司屋。職場の人から勧められて1週間も前に予約を入れ(予約なしでは入れなかった)初入店。大将一人でやっている店。我々が店に入ると大将はここへと我々を 」 形のカウンター下、狭い二人席に誘導し、そしてあがり(お茶)と茶碗蒸しを差し出した。


 握り11巻、鉄火1巻、吸物、茶碗蒸。これで3000円。びっくりするような中トロ大トロがでてきた。これ一つで1000円しそうなやつだ。


 そしてしかし我々はこれまでずっと100円皿の回転寿司でクダを巻いてた種族である。大将が握る寿司をすぐに片付けないと、その強迫観念で喉奥に押し込んでしまい、加速度的に3000円を味わいつくした。


 あっというまに食べきってしまい、残るはガリだけという状態になった。ここはマクドナルドでも吉野家でもない、ファストフードでなく、その太千での味わいはこれきりなんだ。カードを果してしまった我々に彼は言ってくれた「お茶のおかわりは」と。


 場所もそうだ。酔って向かうというのを最初から許さない場所に構えている。


ジョブズに教えたいと思える、そんな寿司屋だ。彼にこの穴子を食わせたかった。そんなにも素敵な本物のお寿司屋さんだ。